結成以来23年間、追随者も併走者もいない、ただ孤独な疾走-。
日本ロック界の至宝、bloodthirsty butchersの“今”を解き明かす
国産音楽ドキュメンタリーの快作誕生!!

―日本ロック界、最重要バンド。

「日本を代表するロックバンドは?」との問いかけに、その名を欠かすことのできないバンドbloodthirsty butchers(吉村秀樹、射守矢雄、小松正宏、田渕ひさ子)。1987年札幌にて結成、数々のバンドを輩出した“札幌ハードコア・シーン”を牽引する。幾多ものバンドがインディーからメジャーへと進出しビッグセールスを記録しては消える。そんなロックが産業化の波にのまれていった時代の中、満を持して91年に上京。そして96年、歴史的名盤「kocorono」を発表。その衝撃は日本ロック界に希望と感動を与えると同時に、多くのアーティストやクリエイターたちに勇気とともにある種の諦念をもたらした。その後も過去に囚われることなく数々の傑作アルバムを生み出し続けるが、誰も追随できないその圧倒的オリジナリティが故に、常に孤独な道を走らざるを得ないバンドである。2010年、ファンの間では最高傑作との声もある最新作「NO ALBUM 無題」を発表。そのクリエイティヴィティに衰えはなく、彼らが常に“今”を生きるバンドであることを証明している。USハードコアの伝説イアン・マッケイ率いるFUGAZIやFLAMING LIPS、RAGE AGAINST THE MACHINEなど錚々たる海外バンドとの共演、国内ではHI-STANDARD、NUMBER GIRL、GREAT3、浅野忠信など数多くのアーティストからのリスペクトなど、その存在感は単にセールス枚数で図ることなど無意味なほど大きなものであり、紛れもなく日本ロック界の宝である。

―あまりにも生々し過ぎる、バンドという共同体の実像。bloodthirsty butchers×川口潤

映画は唐突にメンバー同士の激しい言葉の応酬により幕を開ける。そして絶妙のバランスで演奏されるライヴ・・・。1987年札幌で結成以来20年以上に渡り、日本屈指のロックバンドとして君臨し続けるブッチャーズは、だからこそ産まれる複雑な人間模様や長い活動期間特有の危うい不均衡に立っていた。吉村秀樹という圧倒的で絶対的な存在を中心に、常に揺れ動くメンバーの思い、あたかも倒れそうな独楽の様になりながらも回り続けるバンド-。監督川口潤は今、バンド内に起きている紛れもない不協和音に正面から耳を傾け、張り詰めた緊張感にカメラを差し出した。それはまるでバンドとの長い関係への絶縁状のようでもある。拾い集められたメンバーそれぞれの吐露は、一方で語られる彼らの偉大さや尊敬を自ら否定していく。そしてその表情はロックスターとは程遠く、バンドという奇妙な人間関係を象徴する力の構図は観るものに時として不快感すら与える。だがしかし彼らは決して辞めることはない。時は過ぎ、生きることの試練を与えられ、金、プライド、家族、それら全ての守るものを前にしてもバンドはそれでもどうしてもステージに立ち続ける。家族でも会社でもなければ、友人や仲間とも異なる”バンド”という特異な人間関係がいかに特別なものであるのか。困難を極めながらもなお、同じメンバーで前に突き進むbloodthirsty butchersというバンドが存在することの凄さ。その姿は美しく感動的であり、全てのバンドマン、表現者に僅かな希望をもたらすに違いない。本作は人物を描くものでもなければバンドの歴史を紹介するものでもない。退路を断ち、ロックに身を捧げることを選択した個によって成り立つ特別な運命共同体=バンドの、存在し続けることの奇跡を描いた全ロックファン必見のドキュメンタリー映画でなのである。

―数々の貴重な映像。

本作を語る上で欠かせないのが、活動歴を象徴する膨大なアーカイブ映像である。その中には初公開となる貴重な映像が多数含まれている。結成当事、初代ドラマーでのライブ、マグマのようにシーンの盛り上がりが絶頂に達した札幌でのライブ、大ブーイングを受けながらも臆する事なくステージを全うするRAGE AGAINST THE MACHINE来日時のオープニング・アクト、アメリカでのライブ、メジャーデビュー決定時のテレビ出演・・・コアなファンも納得する貴重映像の数々である。